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PK

 

 

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留学先のベルギーで恋に破れ、祖国インドのテレビ局に勤務するジャグー(アヌシュカ・シャルマ)は、ある日黄色いヘルメットをかぶって大きなラジカセを持ち、さまざまな宗教の飾りを身に着け、チラシを配布する男(アーミル・カーン)と出会う。PKというその男は神様を探しているらしく、興味を持ったジャグーは彼を取材する。しかし、PKが語る話は途方もない内容で……。(シネマトゥデイより)

 

 

 PKは地球を偵察に来た宇宙人。地球に降り立つや否や宇宙船のリモコンを人間に盗まれ、「返して欲しけりゃ神に頼め!」と言われたままにリモコンを取り戻すため神様を探し始めます。するとPKは、”神様”は何人もいることに気付きます。


 人々の服装の違いから宗教観のことまで踏み込んでいるその純粋さと切り口は斬新でユニークで面白い。凄い。宗教をイジりながらも分かり易い言葉で本質へ踏み込み、その不正確性を問う。丁寧な丁寧な150分。愛も涙も込めて、きちんと伏線も回収。言い回しも効いていて脚本がとても良く出来ています。コメディタッチにすることで身近に感じ、より多くの人がこの題材について考えられると思う。向き合い方に愛を感じるし、好感が持てました。


 肌を出しちゃだめ、肉を食べちゃだめ、それぞれの宗教に違ったルールがあるけれど、結局それは人間が決めたこと。私たちが本当に神の子なら、神は殺し合いなんてさせるはずがない。神を振りかざし勝手をする”代理人”たちのせいで、沢山のことがかけ違っている。教祖の言う神のお告げの矛盾をつくことは本当に単純で、でも簡単には踏み込めないこと。

 キリスト教の問題へ踏み込んだ『スポットライト 世紀のスクープ』でもあったけれど、「”教会”は人が作る組織、”信仰”とは違う。その線引きは難しい」という話。ここら辺は信仰者はどう受け止めているんだろうと疑問に感じました。

 
 そんな宗教だけの話ではなく、この映画では歌も歌うし踊るし恋に落ちます。インド映画らしくそれらがいい具合に混ざり合って、飽きさせない展開が楽しい。そしてそんな要素達も伏線とし、きちんと絡めながらPKが辿り着く先が素晴らしいです。嘘を知ったPKだからこそ、そして何も知らないPKだからこそ踏み込めた、彼女の傷。愛を知って、恋をしてるからこその、PKがついたやさしいやさしい嘘。この映画は最高なラブストーリーでもある。恋人からの電話を信じていた心は報われ、最終的にPKは愛も宗教も肯定する。見えないものを信じ、大切にし、人を愛す。愚かで不完全な、愛おしい人間たち。


 見れて良かった反面、よく作ったし公開できたなと思う。無宗教者の多い日本人には馴染みはないけど、だからこそ見やすいんじゃないかな。笑って泣いて笑って、つい考えちゃう映画です。