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メッセージ

 

 

 

※作品の結末に触れています

 

 

 

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テッド・チャンの短編小説「あなたの人生の物語」を基にしたSFドラマ。巨大な球体型宇宙船が、突如地球に降り立つ。世界中が不安と混乱に包まれる中、言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)は宇宙船に乗ってきた者たちの言語を解読するよう軍から依頼される。彼らが使う文字を懸命に読み解いていくと、彼女は時間をさかのぼるような不思議な感覚に陥る。やがて言語をめぐるさまざまな謎が解け、彼らが地球を訪れた思いも寄らない理由と、人類に向けられたメッセージが判明し……。(シネマトゥデイより)

 

 

 

 言語学者で大学教授のルイーズには一人娘ハンナがいましたが、彼女は若くして病気で亡くなってしまいます。仕事を続ける日々の中、突如世界中に謎の巨大物体が現れる。その宇宙船に乗っているのは二つの”ヘプタポッド”。まず彼らの発する言語、始めは言語かどうかも解らないようなそれを解読するために、ルイーズは軍に協力するよう招集されます。

 

 

 円形の滲む墨のような黒い言葉たちは、どういうシステムで言葉となっているのか私は難しくて理解出来なかった…。彼らは何のために来たのか?それを解読するために宇宙船へ踏み込んだルイーズは、まず防御服を脱ぎました。解り合うために踏み込んだ一歩。このシーンでルイーズは賢く強い女性だなと感じました。

 

 なんとかコミュニケーションを試み、ヘプタポッドが「武器を与える」と発していることが解ります。武器とはなんなのか?引き続き数学者のイアン(ジェレミー・レナー)らと共に接触・解読が進む。その頃からルイーズには娘との思い出がフラッシュバックされる症状が度々起きるようになります。


 世界中の上空に現れた宇宙船を危険視する国ももちろん多く、世界は混乱し暴動が起き始める。”武器”を脅威とみなして他国との回線を閉ざし、宇宙船を強制的に落とそうとする国も。(その筆頭を中国にするのがアメリカ映画らしいなと思います笑)「武器を与える」だけではまだ情報不足だ、世界中で情報を共有し、世界がひとつとなるべきだと考えるルイーズとイアンはヘプタポッドに危険を伝え、返答の解読を急ぎます。

 

 

 ヘプタポッドが地球へ来た理由はこうでした。「3000年後に人類から助けられるためやってきた」。同じ頃再び娘のフラッシュバックが起きたルイーズが言います。


 「この子は誰?」

 

 つまりヘプタポッドには時間の流れ、過去も未来も前も後ろも、わたしたちの持っている概念はひとつも持っていないこと。そのヘプタポッドと接触を重ねるうちにルイーズも時間から解放され、流れによる隔たりがなくなり未来が解るようになったということ。ずっと見ていた娘の映像は過去ではなく、未来のものだったということが明かされます。それを理解した彼女は未来の映像に従い中国の攻撃を止めさせ、目的を果たした宇宙船は去って行きました。

 

 

 ヘプタポッドから与えられた「武器」とは言語であり、未来でルイーズが出版するその言語の本は共通語となり世界中に知られ、地球人は3000年後を迎えるときヘプタポッドを救える存在となっているのです。映画の最後、ルイーズはイアンと結婚しハンナという娘を授かり、そしてイアンとの別れ・ハンナを若いうちに病気で亡くすという未来もすべて知った上で、彼女はイアンとの未来を選びます。

 

 


 大傑作。改めて”時間”、”言語”という永続性について考えました。果たして彼女は時間から解放されたと感じるのか、むしろ縛り付けられたと感じるのか…、もし人が時間から解放されたなら、命についての解釈はどうなるんだろう。終わりも始まりもない究極の永遠。避けることの出来ない未来に、希望とも絶望とも表しようのない気分にもなりましたが、でもそれでも、彼女が未来を選んだことに時間の中を生きていく尊さ、素晴らしさを感じました。そして”Hannah”…回文になっているこの名前は、彼女自身を終わりなき存在としています。底なしの愛を感じる、壮大な映画です。